【読書】転記:月刊天文ガイド2015年06月号より

久しぶりに天文ガイドをパラパラと読んでいたら友達の研究結果と思しき記事を発見したので転記。

via 月刊天文ガイド2015年06月号 page10 Astro News JUNE 2015

天の川銀河の回転速度を精密に測定

鹿児島大学の研究者などからなる研究チームは、大質量星形成領域 IRAS 20143+3634にある水メーザー天体の観測を行い、太陽系付近での天の川銀河の回転速度を、これまでよりより精密に測定することに成功した。

太陽系は天の川銀河の中心のまわりをほぼ円を描いて回っており、IRAS 20143+3634も太陽系とほぼ同じ円周上を回っている。この天体までの距離や固有運動を精密に測定するこことができれば、太陽付近での天の川銀河の回転速度を精度よく導き出すことができる。

研究チームはIRAS 20143+3634に含まれる、水メーザーを放射する天体を約2年間にわたって観測し、IRAS 20143+3634までの距離として8870光年、固有運動から計算した太陽付近での天の川銀河の回転角速度として、1キロパーセクあたり秒速27.3±1.6km(通常の速度で表すと秒速232km)という値を得た。この値は国際天文学連合が採用している秒速25.9km(同秒速220km)より大きく、最近のVERAなどによる観測結果を裏付けるものとなっている。

まあ読んだだけではなんのこっちゃ? と思うかもしれない。以下僕の解釈。

まず、地球が太陽の周りをまわっているように、太陽も銀河系の中でグルグルまわっている。で、今回の記事はその回転のスピードを調べたというお話なんだけど、そもそもなんでそんな回転スピードを調べる必要があるの? と言う疑問が沸いてしまうだろう。
まあ「単純な知的好奇心」で片づけてもいいんだろうけど、それじゃつまらないので一つ理由を探ってみると、「銀河系の中のダークマターの測定」ってことになるのだと思う。

実は、今分かっている銀河系の中の太陽などの回転速度は、現代物理学と矛盾する。
高校の物理で習うように、太陽と地球の関係とか、地球と月の関係を調べていくと、『ケプラーの法則』が導かれる。大きい天体の周りを小さい天体がグールグル回っていて、なおかつその回転速度は計算で求められる、という法則なのだけど、これを銀河系にあてはめるとどうなるか?
銀河系でも、もちろん中心(銀河系の場合には中心天体があるわけではないので仮想中心質点ってことになるけど)の周りを太陽がグールグル回っている。ところが、その回転速度がケプラーの法則で導かれる数字よりずっと大きいのだ。
この矛盾をどうするか? と言う問題において、現代物理学では『ダークマター(暗黒物質)』と言うものを想定している。つまり、ケプラーの法則は正しい、でも銀河系でそれが成り立たないのは、現在の人類が観測できていない謎の重力原、ダークマターがあればいいと結論付けて矛盾を回避しているのである。

ということでお話の最初に戻ると、銀河系の中での太陽の回転速度を求めるということは、銀河系の中にあるダークマターの量を求める、ということにつながるのだ。今回の研究によると、今までに比べて太陽の回転速度は速かった。ということは、銀河系の中のダークマターの量(少なくとも太陽と同じ円周上での量)が今まで見積もられていたものよりも多いのでは? と言う結論を結びだしているって話になる。

まあ、他にもお話があるのかもしれないけど、以上がこの記事から読み取った僕の解釈。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください